藤田紘一郎著 「体をつくる水、壊す水」
「日本の水道水の塩素量は世界一」
私は、日本人の健康寿命の短さは、飲み水にあまりに無頓着なことに一端があると考えています。無頓着さゆえに、生活用水として大事な水道水がどのような状態になっているか、気にもしないのでしょう。
日本の水道水の塩素注入量を世界の国々と比べてみると、極端に高いことがわかります。殺菌を目的として注入する塩素の量が多いことが問題なのです。WHOがヨーロッパにおいて定めた規制では、水道水中の一般細菌数に制限を定めていないのに対し、日本では1mℓ中100以下と厳しい制限を設けています。大腸菌群に関してはさらに厳重です。WHOは「水道水中の大腸菌群の混入は100回検査して5回以内なら合格」としているのに対し、日本では「検出されないこと。」すなわち、大腸菌はゼロでなければいけないと、世界で類のないほど塩素を注入しているのが、日本の水道水です。
では、水道水に注入される塩素量が多くなると、なぜよくないのでしょうか。私がもっとも問題視しているのは、腸に共生する細菌類の減少を招くことです。腸は人体最大の免疫器官であることはお話しました。免疫は病気や老化を防ぎ、若々しさを保ったまま長寿人生をまっとうするために、もっとも重要な人体システムです。
この免疫機能を腸内で活性化させているのが、腸内細菌であることがわかっています。私たちの腸には2万種、1000兆個もの腸内細菌が棲みつき、免疫機能の働きを助けているのです。
私たちの腸管は長さ約10m、これを広げるとテニスコート一面分にもなります。細菌類は広大な腸の中で仲間たちと集落をつくって過ごしています。この集落が顕微鏡でのぞくとお花畑のような美しさが観察されます。色も形も鮮やかで美しいことから、腸内細菌叢は「腸内フローラ」と名づけられてました。
しかし、腸内フローラの美しさは、腸内細菌たちにとっては過酷な世界です。腸内フローラは、多種多様な菌群の縄張り争いによって形成されているからです。ですから、新たな菌が侵入してきても、多くの場合は腸に棲みつくことができません。
私たちの免疫機能は、この細菌の集落間の精密な連携によって活性化されています。よって人の免疫力は、腸内フローラの美しさによって違ってきます。多種多様な菌群による腸内フローラが腸管全体に広がっている状態ほど、免疫力は高まるのです。
(つづく)