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世界の危機

 その3

人類が増殖を続けて来られたのは、科学技術の進歩による。人類以外の生き物は、その時その場で獲得できたものを食する以外術はない。他の生物には食料を保存することも、増産することも、家畜を育てることもできないからだ。但し、人間がそれらのことを始めた以降も、人類の人口が急激に増えることはなかった。
人類の人口が増加に転じたのは、産業革命以降のことだ。工業化による大量生産を支えたのは、化石燃料の獲得だったが、ほとんど手つかずのままだった海洋資源を、人類が独り占めできのも科学技術の進歩のお陰だ。自らの力で生産を可能とした人類も、それが人力に頼る間は人口を増やすまでには至らなかった。人為と無関係に蓄積された資源を、機械によって掘り起こし独占できるという幸運を得て、人類は初めて安定的に人口を増やせる環境を手にしたのだ。
そして、私たちの経済は、地球が貯め込んできた資源をお金に換えるという錬金術で大きく膨れ上がってきた。ただし、その資源は無尽蔵ではない。その資源を消費することによって増殖を続けた人類は、後50年もしない内に石油を使い果たす。海洋資源はと言うと、もっと早い内に底をつくことになる。資源は、一度なくなればもうそれに代わるものはない。計算上マイナスという概念は成立するが、ゼロに達したものを再びプラスにする能力を人類は持っていない。

私たちが認識しなければならないのは、上記の点だ。私たちは、地球の資源を頼りに人口を増やしてきたし、経済も大きくしてきた。だが、海洋資源が残り少ない。それがゼロになれば、魚類から得られるタンパク質は消滅し、肉類だけに頼らざるを得なくなる。それは、何かが代わりを務められるものではない。確かに人類は、幾多の困難を乗り越えてきた。だから、「どんな困難も乗り越えられる」と考えてしまう。しかし、地球の資源を一人占めしてきた事実を度外視して、私たちが食糧危機を乗り切る術などない。それは、科学技術の進歩で補える話ではないのだ。

私たちが、今の世界を正しく見るために必要なものは「算数」だ。経済一つ取っても、その本質を理解することに難しい理論は不要だ。「金融工学」なる言葉があるが、実質は何もない。何もないものに権威を持たせるために難しい言葉が使われ、人々を煙に巻く。一般の人には理解できないという領域を作り、そこに権威の拠って立つ場を設けるのだ。アメリカの経済学者でノーベル賞を取ったクルーグマン教授によれば、「今回の経済危機には、石油ショックのような明確な理由がない。消費者が消費をしなくなったことが問題で、消費が戻れば問題は解決する」と言う。こんなお粗末な説しか持たない者が、「天才」と呼ばれる経済学者の実態であり、権威の実情だ。その程度の権威が、今でも世界の経済を牽引していることを、私たちは知っておかねばならない。

資源が無くなれば、200年以上に渡り浪費を続けてきた経済は破綻する。その時、私たちは自分たちが生産できる食料しか手にできないことになる。膨れ上がった人口を抱えたまま、産業革命以前の、人口を増やすことなど覚束ない環境に戻ることになるのだ。それは、難しい数学を通してではなく、簡単な算数が明らかにする赤裸々な真実だ。「自然の摂理」も算数を一歩も出るものではない。資源を紙切れに換え、その資源の豊かさの分だけ、私たちは贅沢を味わった。ゆっくりと味わえば、循環する社会をもっと持続できたかもしれないが、私たちは「なぜか?」「資本主義」を通して、資源を猛スピードで使い切ることを選んだ。
私たちは、盲目的に権威に従う。以前は、もっと反骨精神を持ち、容易に権力に屈することはなかったが、今では流れから取り残されないように必死に前の人に続くだけだ。この行列は一体どこに向かっているのか?一度その列から外れて、その先を直視してみてはどうだろうか?(つづく)

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Author:窓男
水は、あらゆる生命の細胞をくぐり抜けることで生き物たちを束ねながら、地球と成層圏を舞台に、輪廻転生をくり返しています。
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