売れる水、買いたい水
だが、そのやり方に「異を唱える」者たちが現れた。265年間に渡る徳川幕府に抑え込まれていた「諸藩の大名や浪人たち」は、「尊王」を旗印に自分たちを主体とする「権力構造の転換」を図った。元々彼らは交易によって生じる権益に目をつけ、それを我が物としたいと願った。「この権益を幕府の意のままにさせれば、幕府が持つ権力基盤は盤石なものとして補強されてしまう」と踏んだ彼らは、「自分たちの出番」に賭け、「時代の寵児」となる好機を「ものにした」。彼らの目を引いた列強の持つ圧倒的な物量は、欧米が世界中から「掻き集めてきた富」であり、それは、日本の様に「平和裏」に積み上げられてきたものではなかった。しかし、その「富」の大きさに魅せられた討幕派中心の明治政府は、富国強兵策を取り、一気に「奪い合い」の世界へ打って出ることとなる。それが、日本を、中国やロシアに続きついにはアメリカにまで戦争を挑むという流れを作り出した。それは、「富」を海外に求めて権力を手中に収めた者たちが、必然的に辿った道だった。そして、必然的に「負けた」。だが、彼らが対外膨張政策を「投げ出す」ことはなかった。
(つづく)