売れる水、買いたい水
それらの混入物を、欧州各国が採用しているような「緩速濾過法」を用いれば、「ゼロ」に近いものとできる。昔は、日本も「緩速濾過法」で水道水を作っていた。今でも「そう」なら、私が「水事業」を始める理由はなかった。
欧州で行われている「緩速濾過法」は念入りだ。欧州は歴史や自然を尊ぶ。彼らには、町並みや景観を安直に変えてしまうような「軽々しさ」がない。同時に自分たちが積み上げて来た「文化」や「伝統」に重きを置き、その継承を当然のことと考えている。「保守的」と言えばそれまでだが、欧州の人々は、「時間の持つ重み」と「人の心の移ろいやすさ」を良く承知している。その欧州で、「ミネラルウォーター」という概念は育った。「ミネラルウォーター」は、「自然のまま」であることを旨として、人が手をかけてはならない。それが彼らにとっては、「活きた水」の証しだ。「天然」のままであることが「活きた水」である。そして、その「活きた水」が人体に及ぼす「力」に価値を置いている。だから、お金を投じて買い求める。そういう文化が、同時に「緩速濾過法」を入念なものとさせている。できるだけ、「自然でない」モノは体内に入れたくない。それが、彼らが長い年月から学び、「不文律」としてきたことだ。
(つづく)