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抜粋 その6

NHKブックス487 「おいしい水の探求」小島貞男著 日本放送出版協会

緩速ろ過法の1

この方法はロンドンの水道会社の技師ジェームス・シンプソンという人が作ったのが最初で、いまから一五〇年以上も前の話である。彼は水中のごみを取り除こうとして砂ろ過池を考案したのであるが、実用してみるとごみばかりではなく淡い濁りまできれいに取れてすっきりした水ができることが判明した。そしてこれを聞いた他の国でもボツボツこの方法を採用するようになった。そうしたときに、緩速ろ過法の真価を発揮し、ヨーロッパ各国に広まる動機となったハンブルグ(ドイツ)のコレラ事件が起こった。(中略)
以上のことから、コレラの伝染経路はハンブルグ市の水道にあることがわかったが、両市の水道を比べるとハンブルグ市の方が上流から取水しており、アルトナ市はハンブルグ市民八〇万人の下水が流入したあとの下流地点から取水していたのである。ただ両市の水道で大きく違っていた点は、ハンブルグ市では河川をそのまま給水していたのに対し、アルトナ市では緩速ろ過法で浄化してから給水していたというのである。
この結果から、緩速ろ過法はコレラ予防に対しても卓効があることが認められた。そして、この事件を契機として、緩速ろ過法は地表水に対する最も有力な浄化法としてヨーロッパからアメリカに広まり、わが国でも全国各地で採用されるようになった。事実、戦前に作られたわが国の水道はほとんど全部この方法であったから、水源が清純なことと相まって日本中の水道水がおいしかったのである。しかし、戦後、経済発展に伴ってほとんどの水道が薬品の力で浄化する急速ろ過法という、いわばインスタント浄化法に変わってしまった。(つづく)

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水は、あらゆる生命の細胞をくぐり抜けることで生き物たちを束ねながら、地球と成層圏を舞台に、輪廻転生をくり返しています。
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