Water Diary

水を通して見える世界の話を、日記に綴ります

5リットルボトル考

再び、5リットルについて考えます。洗浄充填機の納入をした九州のお客様の開業祝賀会に呼ばれたことがきっかけです。工場は平家の落人が逃げ込んだ深山にあり、一番近い都会は熊本市で車で2時間半はかかります。
その地で、「天然水」を製造し、販売します。最初にお話しがあった時、「販売に難がある」と思われたので、そのことを申し上げました。「お考えになるほどは売れませんから、是非再考してください」と。しかし、「病床にいる父親のたっての願いでもあるし、地域の活性化を主眼としています。ライフワークとして取り組んでいきますから、直ぐに売れないまでも、腰を落ち着けてやっていきます」という心意気に押し切られ、スタートを切ることとなりました。

とは言え、工場が出来上がってみれば、月間1万5千本を超える製造能力を手にした訳ですから、その設備を十分に稼働させていただきたい。その思いを抱きながら、口蹄疫に揺れる宮崎県を訪れました。

繰り返しになりますが、私が5リットルボトルを作ったいきさつに触れておきます。

ミネラルウォーターがその将来性故に、多くの新規参入者を引きつけていますが、一方で、大企業による市場の寡占化は進んでいます。特に、2000年以降ペットボトルのミネラルウォーターの店頭価格は下降の一途を辿り、中小の企業では全く太刀打ちができない状況となっています。大企業ではミネラルウォーター工場内に、ペットボトル製造施設を合わせ持ち原価の圧縮・経費の削減に努めていますが、それでも2リットルボトル1本を売って販売店が得られる利益は10円がせいぜいと聞きます。それだけの薄利でも、販売店がその商品を置くのは、大企業の宣伝力で多売が期待できるからでしょう。また製造する側とすれば、ポイ捨てされるペットボトルの処理費用をうまく免れているからこそ成り立たせられるぎりぎりの商売だと思います。

そこに中小が分け入る余地は、全くと言ってありません。2リットルのペットボトルで参入しようと考えていたなら、圧倒的な物量と流通の違いを見せつけられた挙げ句、設備にかけたお金の回収はできないまま、借金の雪だるまに押し潰されることでしょう。一方、繰り返し使うボトルは、大企業と原価を競ってもレースになります。ボトルの選定方法や管理方法がよければ、大企業よりも原価率を下げることも可能だからです。また、配達エリアの組み方によっては、誰よりも効率の良い地域で確実且つ効果的な経営が可能なのが、ガロンボトルビジネスの魅力です。工場の稼働率を100%とし、それらの製品を最短距離の都市に運び、効率よく配達ができるシステムを組めれば、その地区に他の競合相手が分け入る隙はありません。たとえ、それが大企業であっても。

上記のことは、ガロンボトルビジネス発祥の地アメリカでは定着していることですが、日本においてはまだ「机上の空論」です。では、何がアメリカと違っていて、何が日本に於けるガロンボトルビジネスの進展を妨げているのでしょうか?
私は、その理由のメーンに、サーバーとボトルの大きさを挙げたいと思います。ご存知のようにアメリカ人は大きくて力持ちです。そのアメリカで大型容器に入れた水の配達は大昔から行われていました。そして、100年も前からサーバーを作る会社がありました。ですから、最初は常温水の給水器であったものが時代と共に進歩し、自然な流れで冷温水機の開発につながってきたのです。ボトルの主流は5ガロン(18.9リットル)で、容器の重さも合わせると20kgです。その上に、まだ6ガロンのボトルまでありますから、その使用に関してサーバーは必需で、それ抜きで考える人は「ただの一人」もいません。
一方、日本での普及を考えた私たちは、当初より3ガロン(11.34リットル)を日本人向けの大きさと考えました。出回っている数は少ないにせよ、アメリカにも3ガロンボトルがあり、それを利用すれば最初から型代をかけずにスタートを切れると考えたからです。

但し、3ガロンボトルでもサーバーの必要性は消せませんでした。と言うよりも、重さの観点から3ガロンの採用を決めたまでのことで、サーバーの必要性云々まで考慮した案ではなかったのです。また当時は、陶器製の給水器をセットとして普及に努めていたという事情もあります。その後全国展開を狙うRO各社が、サーバーを主武器にガロンボトルのボトルドウォーター拡販に乗り出し、こちらも否応もなくサーバーに取り組まなければならない時期を迎えました。RO各社が「サーバーさえ据えれば、こちらのもの」と言った営業を展開するのに煽られた格好で、「サーバー無料」を謳う企業との競合を余儀なくされてしまったのです。

5リットルのボトルを作ったのは、そういう状況下でのことでした。自分たちは、「水メーカー」であって、「サーバー屋ではありません」。その線引きのために、どうしても「サーバーを必要としない大きさのボトル」が欲しかったのです。そして、そのボトルを得て、5リットルサイズのミネラルウォーターの販促を行いました。しかし、下記の理由で、その販促を中断させることとなりました。

1.弊社の営業力のなさ 
営業力のなさゆえに、見慣れない5リットルの存在理由を消費者に伝えきれませんでした。一方、3ガロンを使用している人たちからは、5リットルが高い評価を得るという皮肉な結果を得ました。
2.弊社が3ガロンで事業をはじめ、3ガロンも扱っていること
そのため、一方でサーバーを必要としているため、サーバーを必要としない5リットルの営業にウエートを乗せ切れませんでした。数ヶ月ウェブ上での市場調査の結果、「しばらく機の熟すのを待とう」ということにしました。

そんな中で、宮崎県椎葉村を訪れることになりました。そして、5リットルボトルの存在理由を改めて考える機会を得たのです。

地方都市でも、ミネラルウォーターを買って飲む人は増え、都市近郊では水道の蛇口から直接水を飲む人はほとんど居なくなりました。そのお陰でミネラルウォーターの需要は急成長を遂げていますが、今のところその需要のほとんどをペットボトルが一手に引き受けています。一方で、それゆえの弊害が主に容器ゴミの問題として取り沙汰されています。消費者側に課せられる分別仕訳、行政に課せられる処分(回収・焼却等)費用、その間で奮闘する自治会役員、それらの人々の有形無形な労力によって、容器ゴミはリサイクルされています。そうした見えない経費を計算したら、とてつもない金額になることでしょう。その上、容器ゴミは地球温暖化にどれほどの影響を与えているか?ということも多くの人たちが認識するに至っています。

そんな状況にもかかわらず、ガロンボトルはなぜ?ペットボトルに代わる受け皿になれないのか?その点を改めて検証してみましょう。
その最大の要因は価格だと、私は考えます。ペットボトルがミネラルウォーター市場の大半を押さえ続けていられるのは、大企業が打ち出す価格の安さです。その安さに対抗できなければ、結局消費者の心を捉えることはできないでしょう。勿論、できないことをやらねばならないのなら「お話しになりません」。しかし、価格競争力こそが、本来ガロンボトルのミネラルウォーターに備わっている利点なのですから、それを出し惜しみしていては力の持ち腐れです。

たとえば、5リットルボトルのミネラルウォーターの販売価格を300円としましょう。そして、牛乳屋さんに、その1本1本を配達してもらいます。牛乳屋さんまでは製造会社が運び、仕切価格を200円とすれば、牛乳屋さんの儲けは、1本100円となります。

まずは、消費者の立場を考えてみます。販売価格の300円ですが、リッター換算で60円となりますから、ペットボトルと比べても安さで引けは取りません。配達回収費込みですから、利用者の利便性は格段に良くなります。ゴミ問題が解決できるだけでなく、地球温暖化阻止にも寄与できますから、利用者としても心おきなくお使いいただけるでしょう。「水」は毎日使うものですから、使用に関わる負荷はできる限り小さいものに収める必要性があります。そして、その負荷を極少にできたものが、利用者の心を捉えるのは当然の成り行きです。

次に、牛乳屋さんの立場についても考えてみましょう。水は牛乳同様デイリーに必要なものですから、届けて利幅のあるものなら、牛乳屋さんがミネラルウォーターを「扱っても良い」と考えても不思議はありません。実際に牛乳屋さんは、他の商品のチラシを作り利用者からの注文のあった品をお届けしています。しかし、1本運んでも10円にしかならないものなら、そんな商品を扱いたがる人はいません。それが、3割以上の利益が見込め、販売価格もリーズナブルなものなら、多くのお客様を得られるという計算ができるでしょう。それが、今までの3ガロンのように、サーバーも売り込まなければならないとすれば「箸にも棒にもかからない」話でした。しかし、サーバーを除いて、「水」だけで考えられるなら、話は簡単明瞭です。そこにガロンボトル本来の利点が、くっきり浮かび上がってくるではありませんか?

最後に、製造会社の立場にも言及しておきます。このプランでは、製造会社がサーバーに頭を悩ます必要性がなくなります。サーバーが欲しいと仰るお客様には、手配をして差し上げればいいのです。そうすれば、サーバーを抱え持つための初期投資の負担から解放されます。それは、水の価格にも大きな影響を与えることとなるでしょう。また、もしもミネラルウォーターの販売を5リットルだけに絞り込むならば、弊社の洗浄充填機のBPHを90から120に引き上げることができます。3ガロン月産15,750本を、5リットル専用機とするなら月産21,000本にすることができます。そのことによって、3ガロンを扱うよりも合理的なビジネスが展開できる可能性が広がります。

ペットボトルよりも安く、しかも関わるすべての人に利をもたらすことのできる「水」の登場です。

地域の活性化とは?そもそも何を意味する言葉でしょうか?商売の原点は、物々交換です。交通機関が発達していない昔、その物々交換は地産地消を基本に行われていました。馬や人が特産品を背負い交易の地まで運び、そこで自分たちの地にはない品を得ました。そんな光景が、ほん一昔前には、ここ椎葉村でも見られていたことを改めて知らされました。宮崎の方言が飛び交う宴会は、「寅さん」の世界に迷い込んだような錯覚を覚えるほど、穏やかで楽しい一時でした。自然の中で、その自然に溶け込むように暮らす人たちが醸し出す「柔らかさ」。その「柔らかさ」が発する得も言えぬ心地よさは、昼過ぎから夜の更けるまで続いた宴会が終わっても、消えることはありませんでした。

その地にいずる「清水」を、求める人々にお届けし、飲んでいただく。その想いに徹すれば、「道は開ける」という確信を、今回の訪問を通じて強く感じました。それは、現代人が失ってしまった「心地よさ」を、「この地」が即ち「この地の水」が呼び覚ますだろうと確信したからに他なりません。
それを、「安売り」するというのではなく、地産地消でなければ達成できない価格でお届けする。一歩先んじて、関わるすべての人が「利」に浴せる価格で販売する。それは間違いなく、地域を活性化させる力となるはずです。遠く離れた地から運び込まれた品が、地域の経済を寸断する作用を及ぼすに至っています。地産の物は、それを作り出す人だけでなく、それを販売する人にも、それを消費する人にも利益をもたらす合理性を有しています。その合理性を最大限に生かし、地産地消を復活させることこそがそのまま地域の活性化につながります。

日本の経済は、地方から上京を果たし故郷に錦を飾ろうとする人々の力で隆盛を極めました。その力が弱まり空回りをし始めた今、私たちは今一度原点に立ち帰ることを求められています。「すべての源」と称される「水」をもとに地域の活性化を促し、再生を期す。「水」に恵まれた国だからこそできる、取り組みを心ある方々と進めていきたいと願います。

牛乳屋さんは、あくまで一例と考えてください。また、金額についても話を分かり易くするために数字をはめてみました。あくまで参考としてしてください。
ただ、地域に根ざした商売で、毎日必要なものをお届けし、空瓶を回収するという点では、ガロンボトルビジネスとこれほど類似点を持った商売は他にはありません。LPガス屋さんをベースに成長したRO各社よりも、牛乳屋さんは天然水製造会社にとって、食品を扱うという点ではるかに打ってつけの提携先だと思えます。また、どこか一つで成功事例が作り出せれば、それぞれの水のよい地の水工場と牛乳屋さんが手を組むことで、地域活性化の輪は無数に広がっていく可能性を秘めています。

(完)






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